交雑とは
糸を取るためのまゆ(糸繭)を作る蚕の大半は交雑種です。
交雑種とは、全く違う品種を掛け合わせて出来た品種のことです。
糸繭を作る蚕は日本種と中国種の交雑種が多いです。
日本種と中国種の交雑は、両親の系統に比べて成長速度・大きさ・生存率・生産性などが勝れているという現象が起こる場合があり、これを雑種強勢といいます。
日本種どうしや中国種どうしの交雑は、お互いの系統が近いので雑種強勢があまり出ません。明治時代までは日本在来種が飼育されていましたが、大正時代以降からは日欧や中欧などの交雑種が飼育されるようになり、まゆの生産性が上がりました。
蚕の雑種強勢の特徴をあげると以下のようになります。
- 雑種の産卵数は親の蚕と比べて著しく増加する。
- 孵化がそろっていて、幼虫の経過が短くなる。
- 病気に対して強くなるので飼育が楽になり、天候不順にも耐える。
- 繭重、繭層量、収繭量が多くなる。
- 繭糸繊度が太くなり、繭糸長も長くなる。
精練
繭糸は繊維であるフィブロインをセリシンが覆っているという構造になっています。
着色まゆ、特にカロチノイド系の色素を含んでいるまゆは、セリシンに多くの色素を含んでいます。セリシンは熱水やアルカリに溶ける特性なので実際に溶かしてみました。
1. 5gのまゆを細かく切ります。 |
2. 切ったものをガーゼにくるみます。 |
3. 500gの水にマルセル石鹸1gと炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)0.25gを入れ沸騰させます。炭酸ソーダが無い場合は重曹を0.5g入れます。 |
4. 2を3に入れ40分煮ます。反応を早くさせるためにガラス棒などで突きます。 |
5. 40分煮るとオレンジジュースみたいになります。 |
6. 40分後まゆを取り出しよく絞ります。 |
7. 新しく作った3に6を入れまた40分煮ます。二回目はあまり色が出ません。 |
8. 40分後、水でよく洗って乾燥させたものです。だいぶ白くなりました。 |
まゆは基本的に年4回、春・夏・初秋・晩秋に収穫される
夏と秋は桑に付いた野外昆虫の影響や、気象条件によって蚕が病気になりやすく、昭和初期まで作柄が不安定でした。作柄を安定させるために品種改良が進み、昭和中期から質の良い糸がとれ、病気に強い品種のカイコが飼育されるようになりました。
品種改良に より、現在は明治時代と比べて飼育日数が約67%に減少し、一粒のまゆの重さが約1.8倍になり、一粒のまゆからとれる糸の長さが約2.2倍になりました。
年々まゆの生産量は減少していますが、特徴のある糸がとれるまゆは注目されています。特に細い糸がとれる品種の需要が増えています。細い絹糸は光沢が強く軽いので高級品に利用されています。